原発性胆汁性胆管炎~女性の原因不明の肝障害~

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)について

当院では原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の診断および治療を行っています。
典型的な発見例として、40~60歳代の女性で、健康診断や採血で軽度の肝機能異常(AST、ALT、γGTP、ALPなど)が見られつつも、軽微なため詳細な検査が行われないまま経過しているケースが一定数存在します。

このページでは原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)について詳しく解説します。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)とは

原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、以前は「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていましたが、病名が変更されました。
この病気は国指定の難病で、小胆管に慢性的な炎症が発生し、最終的に胆管が破壊される自己免疫疾患です。「胆汁うっ滞」を引き起こし、肝硬変や肝不全に進行することがあります。
患者の多くは中年以降の女性で、初期症状は軽微または無症状であるため、定期的な血液検査が非常に重要です。
肝硬変という名前が病気の事の誤解を招きやすいかったので病名変更により患者さんに説明がしやすくなりました。
難病=重症と考えてしまいがちですが、適切な治療を行えば予後は比較的良好な疾患です。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の原因

PBCは自己免疫反応が主な原因とされています。患者の免疫系が肝臓内の小型胆管を攻撃し、慢性的な炎症と破壊を引き起こします。
以下の要因が関連すると考えられます。

  • 抗ミトコンドリア抗体(AMA)
    PBC患者の約95%で検出される自己抗体で、特定のミトコンドリア成分を標的とします。
  • 免疫細胞の活性化
    Tリンパ球が胆管上皮細胞を攻撃し、炎症と破壊を引き起こします。
  • 遺伝的素因
    家族歴や特定のHLA型が発症リスクに関与していると考えられています。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の症状

初期症状

  • 瘙痒感(かゆみ):胆汁うっ滞により皮膚内に胆汁酸が蓄積することで生じます。夜間に悪化することがあります。
  • 口や目の乾燥:シェーグレン症候群を合併している場合に見られることがあります。

肝機能障害が進行した症状

  • 黄疸:胆汁色素が血液中に増加し、皮膚や眼球が黄色くなる状態です。
  • 肝硬変症状:腹水、浮腫、食道静脈瘤などが現れることがあります。
  • ビタミン欠乏症:胆汁の分泌障害により脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収が低下します。

無症候型PBC
進行する前に無症状で発見されるケースが増えています。健康診断や血液検査でAST、ALT、ALP、γ-GTPの異常を指摘され、診断に至ることが多いです。
健診事業が発達したため、無症候で発見されるPBCの方が増えています。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の診断と検査

PBCは以下の基準で診断されます。

  1. 組織学的にPBCの特徴的所見を認める場合。
  2. 抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性で、臨床像がPBCと一致する場合。

診断には以下の検査を用います。

  • 血液検査

    • 肝機能検査:ALPやγ-GTPが胆汁うっ滞の指標となります。
    • 自己抗体検査:抗ミトコンドリア抗体が診断の重要指標です。
    • 免疫指標:IgMの上昇が認められます。
  • 画像検査

    • 腹部超音波:肝臓や胆管の異常を確認します。
    • MRCP:原発性硬化性胆管炎(PSC)との鑑別に使用されます。
    • フィブロスキャン:肝臓の線維化を評価する非侵襲的検査です。当院でも導入しています。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の治療

薬物療法

  • ウルソデオキシコール酸(UDCA):胆汁の流れを改善し、肝硬変への進行を抑える標準治療薬です。
  • フィブラート系薬剤:UDCAで効果が不十分な場合に併用されます。
  • 免疫抑制剤やステロイド:炎症が強い場合や自己免疫性肝炎合併がある場合に用いられます。

肝移植
重症例や治療に反応しない場合に適応となります。ただし、早期診断技術の向上により肝移植の必要性は減少しています。

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の予後

PBCは慢性疾患ですが、適切な治療と早期診断により予後は大幅に改善されます。

  • UDCA治療を受けることで、多くの患者が正常な肝機能を維持しながら生活を送れます。
  • 無症候性の患者は予後が良好で、通常の生活を続けることが可能です。

まとめ

当院では原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)の診断・治療を実施しています。
原因不明の肝障害でお困りの方は、ぜひ当院にご相談ください。

腹部の超音波検査(エコー検査)~脂肪肝、肝機能異常、胆石、胆嚢ポリープ、膵臓チェックも~

脂肪肝にはフィブロスキャン検査(脂肪肝、非アルコール性脂肪性疾患/NAFLD、非アルコール性脂肪性肝炎/NASH、肝硬変など) 

著者


東長崎駅前内科クリニック 院長 吉良文孝

資格
日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会
日本肥満学会
 
経歴
平成15年 東京慈恵会医科大学 卒業
平成15年 東京警察病院
平成23年 JCHO東京新宿メディカルセンター
平成29年 株式会社サイキンソーCMEO
平成30年 東長崎駅前内科クリニック開院

著者

吉良 文孝 さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック和光市駅前院 理事長

資格

  • 日本内科学会認定 認定内科医
  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会認定 肝臓専門医
  • 日本消化管学会認定 胃腸科指導医
  • 日本糖尿病学会 会員
  • 日本肥満学会 会員
  • 日本抗加齢学会 会員

経歴

  • 平成15年:東京慈恵会医科大学 卒業
  • 平成15年:東京警察病院 勤務
  • 平成23年:JCHO東京新宿メディカルセンター 勤務
  • 平成29年:株式会社サイキンソー CMEO 就任
  • 平成30年:東長崎駅前内科クリニック 開院
keyboard_arrow_up