内視鏡検査前後の食事の注意事項

内視鏡検査の前後の食事

内視鏡検査は、胃や大腸の内側をカメラで観察する検査です。
内視鏡検査の質を担保するためには、検査前までの一定の食事制限が必要です。
また大腸ポリープ切除後など術後出血が発生する可能性のある内視鏡手術後にも食事の注意が必要な場合があります。

ここでは、胃カメラと大腸カメラの前後の食事について、また日帰り大腸ポリープ切除術を行った際の食事についてご紹介します。

胃カメラ前の食事

胃カメラを実施する為には、胃の中が空っぽでなくてきちんとした検査はできません。
胃は正常な動きの方であれば、4時間程度である程度空っぽになります。
ただ少し余裕をもって6時間以上の絶食をお勧めしております。
便秘がある、胃の動きが悪いと言われたことがある、胃の手術後の方、以前胃カメラで食べ物が残っていると言われた方は長めの絶食時間をとっていただく方が無難です。
胃カメラに関しては検査前の水分摂取は少量なら口にしていただいて問題ありません。
常用薬の服用に関しては、問題ありませんが、抗血栓薬や高血小板薬に関しては事前の中止をお願いするケースがあります。
詳しくはこちらをご覧下さい。

午前中の胃カメラ検査の場合

検査前日の21時頃から絶食をお願いします。

それより前の期間は食事制限はありません。

胃カメラ当日は朝食を抜きます。
水分補給は水やお茶など透明な液体にしましょう。
また、鎮静剤を使用する場合は、車の運転や危険な機械の操作は避けましょう。

午後の胃カメラ検査の場合

当院では夕方まで胃カメラ検査が実施可能です。
午後に胃カメラ検査の場合は、6時間以上の絶食をお願いしております。
検査当日の水分補給は水やお茶など透明な液体が無難です。
その日の朝食は食べてもらって構いませんが、量は少なめにし、消化によいものにして下さい。
昼食は抜くようにしてください。
うどん、かゆ、具の入っていないスープ、豆腐、納豆など、消化が良いもので、繊維や脂肪が少ないものをお勧めします。

胃カメラ後の食事

検査直後は喉に麻酔がかかっていて飲み込みにくくむせてしまうことがあるので、急な飲水は避けましょう。
検査終了後30分程度たったころから、少量をゆっくりと飲んで頂いて飲み込みに問題ないか確認してからの飲水にしましょう。
検査後1時間もすれば喉の麻酔はとれますので、問題なく飲めるようになります。

食事に関しては明確な制限はありません。
検査後の昼食、夕食は通常制限はありません。
胃カメラでポリープや胃がんを疑うよな病変の細胞をとるような精密検査(病理検査)を行った場合のみ、当日の過度な飲酒や極度に脂肪分が多い食事は避けましょう。

検査翌日以降は医師から注意事項を言われていない場合は通常通りで問題ありません。
また胃のポリープは大腸のポリープと違い外来で切除を行うことは殆どないため、大腸ポリープ切除後の様な厳密な注意事項はありません。
たまバリウム検査と違い検査後に下剤の服用はありません。

大腸カメラ前の食事

大腸カメラを実施するには、大腸の中の便を空っぽしないといけません。そのため検査の前に下剤を内服(前処置)して腸が空っぽになるまで排便を促すことになります。

その際に排便がしにくい状況があると、当日の大腸カメラ検査が遅くなる、または実施不能になることがあります。
そのため検査の3日前頃より消化の良い食べ物をとっていただくようにお願いをしています。
避けていただきたい食材は下に載せておきます。
種がのこるような果物、ゴマなどの食べ物や皮の残りやすい野菜(トマトなど)、キノコやコンニャクも結構残りやすいです。
便秘がひどい方は事前に内服薬など便秘のコントロールをお願いしています。また食事の注意を4-5日前からお願いすることがあります。
またクリニックによっては検査前日の食事を検査前食として販売していることがありますが、当院では検査前食を使用しないでも十分に検査ができるため、お渡しはしていません。下記にコンビニでの食事メニューなども記載があるので参考にして下さい。様々なレシピで検査前の対応は可能です。
また厳密に食事制限が出来ていなくても問題なく検査が実施できるケースが多いですのでご安心ください。
常用薬の服用に関しては、問題ありませんが、抗血栓薬や高血小板薬に関しては事前の中止をお願いするケースがあります。
詳しくはこちらをご覧下さい。

検査当日は朝食は抜いてください。
飲水は透明な液体であれば、していただいて問題ありません。
ご自宅もしくは来院で前処置の下剤をお飲みいただいて、便が綺麗になったら検査開始です。

大腸カメラ後の食事

大腸カメラで病理検査やポリープ切除を行わなかった場合は、特別な注意事項はありません。

大腸が空っぽなので、急な飲酒や消化に悪いもの、過度に辛いものや油の多いものは避けていただいた方が無難でしょう。

 

大腸ポリープ切除を行った場合の食事

大腸ポリープを切除したあとは大腸からの出血のリスクがあるため、食事の注意が必要です。
ポリープを切除する際には大腸内視鏡からスネアと呼ばれる器具を出して切除を行います。
そのため切除後のキズより術後に出血する可能性が有るのです。特に内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic Mucosal Resection(EMR)と呼ばれる高周波電気メス(電流)を使用した治療の場合には、電気メスを使用しないコールドポリペクトミーと言われる手技の場合に比べて出血のリスクが上昇します。

ポリープ切除のあとから出血をしてしまうと、再度大腸カメラを実施し止血術を実施しないといけないですし、入院をお願いすることもあります。
そのため大腸ポリープ切除後の生活には出血を予防するために色々な注意点をお話ししております。
何を食べればよいのか?と迷った場合には無理はしないようにしてください。

まずはポリープ切除当日は流動食に近いものを摂取するようにして下さい。
ラーメンやカレー、脂の多いステーキ、焼肉などの高脂肪食や刺激物はお控えてください。
みそ汁やゼリー飲料、スープ、重湯のような流動食に近い形態のものにしてください。
初日の食事は大事です。

翌日、2日目は粥や雑炊、うどんなどの消化のよいものをたべましょう。ネギや根菜を入れるのは避け、口寂しければ卵を入れまるのがおすすめです。乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)も避けてください。

3日後から1週間迄は脂身の少ない魚や鶏肉を使用したメニューにしましょう。
蒸す・茹でる・煮るなどの調理方法で、揚げ物や炒め物は避けましょう。
徐々に普段の食事に近づけていってください。
脂肪分が少ない魚であれば刺身などを禁止する必要はありません。

ポリープ切除後に食べても良い消化しやすい食事の例

白かゆ、素うどん、食パン
白身魚、はんぺん、ヒレ肉・赤身肉、鶏ささみ、皮のない鶏肉
半熟卵、卵豆腐など卵のみの料理
豆腐、みそ
ホウレンソウ、かぼちゃ(種・皮は除く)、玉ねぎ、キャベツ、白菜、大根(葉は除く)、イモ類(皮は除く)
バナナ、リンゴ
プリン、具の無いゼリー、カステラなど

ポリープ切除後に割けるべき食材(消化しにくい食物繊維が豊富なもの、脂っぽい脂肪分が多い、カフェイン含有など)

惣菜パン(惣菜によります)、ラーメン、焼きそば、コーンフレーク、玄米
脂が多いウナギなどの魚、イカ・タコ、ハム・ソーセージ、脂肪の多い肉、ホルモン、揚げもの
枝豆、がんもどき、油揚げ
ごぼう、レンコン、たけのこ、トウモロコシ、コンニャク、キノコ、海藻、香辛料やハーブ
スイカ、キウイ、イチゴ、柑橘類の一部、ドライフルーツ
チョコレート、ケーキ、ヨーグルト、ナッツなど

ポリープ切除後の食事の注意のまとめ

食事に関しては、お腹にいいかどうか迷ったら腸に負担になることは止めてくださいとお伝えしています。
1週間はきついですが、ご協力いただけますと助かります。
出血に関してはポリープ切除後1週間たってからも出ることがあるので厳重に注意をしております。
とったポリープの大きさや個数によって食事の制限の違いがあることがあります。
食事内容や調理方法などに注意をして手術後の合併症を減らしましょう。

また1週間を通じてアルコールやコーヒーなどカフェインを多く含む飲み物、香辛料、刺激物もお控えください。
アルコール摂取は最も出血の確立を上げるので禁酒をお願いします。
喫煙(タバコ)に関しては、必ずしも禁止はしていませんが、大腸の動きが強くなる方がいるので、できれば禁煙をして下さい。

食事の注意とは違いますが、日常生活の注意として・運動や力仕事、旅行や出張などの遠出はお控えください。
また入浴は血管を広げて出血しやすくなるため、シャワー浴程度にしてください。
なお腹圧がかかること自体が出血に係わることはありません。
また大腸がんであった方が出血のリスクが高いわけでもありません。

術後の出血は腹痛などの自覚症状が出ることなく血便が多量に出ます。血便が見つかったら早期発見で治療を行います。

※内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic Mucosal Resection(EMR)
大腸内視鏡の先端から局注針と呼ばれる器具より生理食塩水を注入したのちに高周波電気メスから電流を流し大腸ポリープ(腺腫など)を焼き切り切除する治療方法です。電気メスを使用することで、術後に潰瘍を形成する為、術後早期のみでなく1週間後にも出血発生のリスクがあります。また穿孔のリスクにもなります。後述するコールドポリペクトミーより大きく切除を行うことが可能で、おおきい腺腫や平坦な腺腫などの際に実施します

※コールドポリペクトミー
ERMとは異なり電流を使わずに大腸ポリープ切除を行う治療方法です。術後に潰瘍はつくらないので、術後後期の出血や穿孔の発生リスクは少ないですが、8ミリ以上の大きい腺腫には向いていない治療方法です。また術後早期の出血のリスクはあります。

著者

理事長さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック
和光市駅前院

理事長 吉良文孝

資格

日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会

経歴

平成15年東京慈恵会医科大学 卒業
平成15年東京警察病院
平成23年JCHO東京新宿メディカルセンター
平成29年株式会社サイキンソーCMEO
平成30年東長崎駅前内科クリニック開院
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