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ストレスが原因の胃痛は、診断も治療も一筋縄ではいかず、じつは放置してはいけない疾患が隠れている場合があります。
この記事では、ストレスによる胃痛の具体的な症状や原因、胃痛から疑われる疾患やストレスによる胃痛の治し方などを紹介します。
ストレス以外の原因も考えられる胃の不調についても紹介するため、症状改善のために行動するきっかけにしていただければ幸いです。
胃痛の具体的な症状
胃痛の痛みの表現としては、以下のようなものがあります。
シクシクと鈍い キリキリと鋭い ズキズキと脈打つような キューっと締め付けられるような 胃痛にはこのような痛みの表現がありますが、これは原因に関係していることが多いため、医師も原因を探る際の手がかりとしています。
胃痛の具体的な症状は以下の通りです。
- 食べようとすると痛む
- 突然痛みだす
- 決まった食べ物や飲み物で痛む
- 断続的な軽い痛み
- 何日も治まらない痛み
- お腹が空くと痛む
- 食後に痛む
- 鎮痛剤の服用で痛む
- 痛みと一緒に吐き気や発熱がある
- ストレスで痛む
このような痛みをみぞおち付近に感じる場合は胃痛です。
腸の痛みは腸の動きで起こるため、痛む場所がそのときによって変わり、同じ腹痛でも違いがあります。
胃痛は胃酸や胃痙攣、胃腸の機能低下によって起こりますが、それらを引き起こす根本の原因はおもにストレスといわれています。
ストレスによる胃痛とは
ストレスが引き起こす胃痛は、ストレスの受け方によって痛くなるタイミングに違いがあったり、対処法を変えたりする必要があります。
ここでは、ストレスによる胃痛について詳しく解説します。
一時的な胃痛
ストレスによって引き起こされる一時的な胃痛は日常にある特定のストレスに要因があります。
仕事によるプレッシャーや人間関係によるもの、試験や会議・イベントなどでの強い緊張によって一時的に痛むため、それが解消されると改善することが多いです。
原因が明確で自覚しやすいですが、繰り返し痛みや不快感が起こる場合は放置せず、原因となるストレスを管理し適切に対処する必要があります。
慢性的な胃痛
長期間にわたるストレスの持続が原因の胃痛は、胃の正常な機能や消化の際のプロセスが障害されるような悪影響をうけるため、慢性化します。
受験勉強や締切のある課題、長期間にわたるプロジェクトなどの仕事、好ましくない環境で強いられる生活などで胃が緊張し炎症が生じた場合、持続的な胃痛や不快感が現れます。
胃の活動や胃液の分泌などの働きに問題が起きてくる可能性があり、日常生活に悪影響を及ぼすため、慢性的な胃痛は早めの対策が必要です。
胃痛とストレスホルモン
胃痛を引き起こすストレスホルモンにコルチゾールがあります。
ストレスホルモンは通常、ストレスから身を守るために必須のホルモンです。
過剰にストレスを受けることによりコルチゾールは慢性的に高くなりますが、これは必要とされて高くなるわけではなく、抑制が必要な場合に働く機能が壊れてしまうためです。
過剰に分泌されたコルチゾールは胃腸の働きを悪くし、胃酸が多く分泌されるため、胃痛を引き起こします。
ほかにも、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどのストレスホルモンがありますが、これらも消化器の機能を低下させる作用があります。
胃痛と自律神経
胃痛にはさまざまな原因がありますが、自律神経の働きのバランスが乱れることでも、胃痛が引き起こされます。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経系から成り立ち、それぞれに特徴があります。
- 交感神経:緊張すると活性化し血管が収縮。胃の血流が減るため、胃の粘膜が減少する
- 副交感神経:リラックス時に活性化し胃酸の分泌を増やす、蠕動運動を促進するなど消化活動を促す
どちらも活性化する場合は自律神経のバランスが崩れている状態です。
交感神経が活発化して血管が収縮するのは『ストレスを感じる=命の危険を感じる』場面で出血量を抑えるためです。
そして、交感神経が強く働くとき、身体はバランスをとろうとするため、副交感神経の働きを強め、リラックスしようとします。
ストレスによって胃痛が引き起こされるのは、胃の粘膜が減少しているのに胃酸が増え、胃粘膜が痛むためです。
ストレスによる胃痛から考えられる疾患
ストレスによる胃痛は、慢性化したり進行したりすると疾患につながってしまいます。 ここでは、ストレスによる胃痛から疑われる疾患について紹介します。
機能性ディスペプシア
以前は神経性胃炎というような病名で診断されていた機能性ディスペプシアは、胃痛や胃の不快感があって検査をしても悪いところが発見できない、胃の不快な症状の総称です。
機能性ディスペプシアの症状は以下の通りです。 胃もたれ 満腹になりやすく、少ししか食べられない みぞおちに痛みや灼けるような感覚がある 原因として考えられるのは、食べ物を溜め込みたいのにしっかり胃が膨らまないという胃の運動障害や、胃や十二指腸の知覚過敏、生活習慣、胃酸過多、ピロリ感染症、そしてストレスです。
診断する際は、胃カメラやエコー検査、血液検査などで他の病気の可能性がないことを確認する除外診断です。
痛みが日常生活に支障をきたす要因となるため、胃もたれなどの早い段階でしっかり対処する必要があります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は消化器の疾患が認められないにもかかわらず、腹痛や便秘・下痢を繰り返す疾患です。
過敏性腸症候群の症状は以下の通りです。
数週間~数ヶ月にわたり、お腹の不調や痛みがある・下痢や便秘が数ヶ月続いている・排便をすると症状がいったん落ち着く・排便の回数が変化する・便の形状がよくない・残便感がある・緊張すると症状が悪化する・電車などトイレがない場所や仕事で緊張する会議などの場面で急に便意におそわれるため、QOLが著しく低下する悩ましい疾患です。
機能性ディスペプシア同様、胃カメラやエコー検査・血液検査などで他の病気の可能性を除外したうえで、上記の症状がある場合に診断されます。
『低FODMAP食』による症状を見ながら症状が起こらない食べ物を探る食事療法や、薬物療法、生活習慣の見直しなどをして、よくならない場合は心理療法も併用していく場合があります。
胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が胃酸による炎症で重症化し、下の層が傷ついた状態が胃・十二指腸潰瘍で、仕事の責任が重くなる中高年の男性に多くみられます。 以下のような症状があります。
胃周辺の痛み 胃もたれ・胸やけ げっぷ 吐き気・吐血 膨満感 黒色便・下血 悪化すると胃や十二指腸に穴があき、内容が腹膜内に漏れ出て腹膜炎を起こすこともあります。
治療法としては基本的に薬物療法ですが、重度の場合は外科手術になる場合もあります。
ストレスによる胃痛の治し方
生活に支障がでるほどの症状には早急な対応が必要です。
胃の疾患の原因はストレスが多いですが、その場合の胃痛を治す方法を紹介します。
ストレス管理
胃痛の原因がストレスなら、解消するのが最適な治し方ですが、疾患の場合は治療を考える必要があるため『ストレス管理』という言い方が正しいでしょう。
日常で取り組みやすいストレス管理の方法は以下です。
これらは、規則正しい食事と睡眠、プライベートな時間の確保、適度な運動などを前提に行いましょう。
認知行動療法
ストレスによる胃痛の場合、考え方や行動パターンを変えて心のバランスを整える『認知行動療法』が効果的な場合があります。
認知行動療法では、気持ちが動揺したり辛くなったりしたときに頭に浮かんでいた考えが、どの程度現実と食い違ってるかを客観的に検証し、バランスをとっていきます。
具体的には、ストレスにつながるネガティブな思考パターンをポジティブな思考に転換する方法や、ストレスに対処する方法を学びます。
医師と力をあわせる治療関係を大切にしたうえで、日常生活のなかで行うことが重要です。
内服薬
病院で処方する薬には、原因となる疾患に合わせた内服薬や漢方薬などがあります。
以下のような効果のある内服薬が処方されます。
胃酸の分泌を抑制 胃の機能改善 胃粘膜の修復 消化器の働きを元に戻す効能のある漢方薬を処方したり、内服薬で効果がない場合やストレスや精神的な問題が強い場合は、抗うつ剤や精神安定剤を処方したりすることもあります。
市販にも胃の痛み止めはありますが、用法・用量を守らない場合に胃が荒れやすくなるなどがあるため、早い時点で医師に相談したほうが安心でしょう。
胃痛のときに行う検査
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群のように、検査をしても原因が見当たらない胃の疾患の場合、他の病気の可能性を除外する必要があります。
ここでは、胃痛の時に行う検査について紹介します。
胃カメラ(胃内視鏡検査)
胃カメラ検査は口や鼻から細いカメラを挿入し、実際に胃の粘膜を視て確認できます。
胃カメラが喉を通る際に「オエッ」となる咽頭反射が苦痛であるイメージがありますが、最近は鎮静剤を使用したり、喉を通らない経鼻内視鏡など、苦痛の少ない検査が受けられます。
もし胃粘膜に病変が認められた場合、その場で組織採取して病理検査も可能で、ピロリ菌に感染している場合は除菌も行えます。
大きな疾患の発見を見逃しにくい胃カメラ検査は有益です。
腹部エコー検査
腹部エコー検査は胃カメラで発見できないみぞおち近辺の臓器である膵臓・胆のうなどの状態を確認できます。
みぞおちが痛いために胃に問題があると思っていたけれど、実際は胆石症や胆のう炎・急性膵炎だったという場合もあります。
対象部分の表面にジェルを塗ってエコーの発信機を当てるだけの、苦痛はまったくないといえる検査です。
胃カメラで観察できない胃痛の原因や胃近辺の臓器の病気は、腹部エコー検査で確認します。
ストレス以外の胃痛の原因と治し方
ストレスは胃痛の主な原因ですが、ストレスの他にある原因も放置せずに対処することが大切です。 ここでは、胃痛を引き起こすストレス以外の原因と治し方を紹介します。
食生活
食べ物が行きつく先の胃は、食生活の影響を受けて胃痛を引き起こすこともあります。
胃痛や胃もたれなどの胃の不調は、暴飲暴食などによる胃酸過多や消化管の過剰運動、お酒や消化の悪い食品、脂質や香辛料などの刺激物の摂り過ぎなどが原因です。
一時的なものであれば食生活を元に戻すことで症状が治まります。
胃の不調が悪化しないうちに食べ過ぎや飲み過ぎを避け、栄養バランスのよい食生活を目指しましょう。
ピロリ菌
胃痛を引き起こす原因の一つに、ピロリ菌の感染があります。
細菌は通常、酸性の胃のなかで生きていけませんが、ピロリ菌は胃の内部をアルカリ性に変えることができるため、胃の粘膜のなかに定住し、そのせいで胃粘膜がダメージを受けます。
胃がんのリスクや慢性胃炎の原因となるピロリ菌の確認は、血液検査によって可能であり、除菌することで胃痛などの症状の改善が期待できます。
ストレスも含め、胃痛の原因が見当たらない場合は、ピロリ菌検査をおすすめします。
胃痛から考えられるほかの疾患
胃痛はストレス以外の原因で引き起こされることがあります。
胃痛から考えられるほかの疾患は以下です。
食中毒、逆流性食道炎、胆のう炎、胆管炎、逆流性食道炎は胃痛が症状の一つとして現れます。
胆のう炎・胆管炎は、みぞおち付近に痛みがあるために胃痛と間違われやすい疾患です。
逆流性食道炎は食道がんのリスクがあり、胆のう炎や胆管炎も命に関わる疾患のため、放置のリスクが高い疾患として、みぞおちの痛みは早めの受診が必要です。
まとめ
よく胃を押さえながら仕事をしている人がいますが、ストレスによる胃痛は放置することでさまざまなリスクが高まる症状です。
- がまんできないほどの鋭い胃の痛み
- 冷や汗をかくほど痛い
- 歩くと響く痛み
- 吐血や嘔吐と伴う胃痛
このような胃痛の場合は緊急性が高いため、へお越しください。
苦痛の少ない胃カメラ検査でしっかり胃の内部を観察し、原因が胃ではない場合はエコー検査も行います。
胃痛のどのようなささいなことでも、にご相談ください。