クローン病とは

クローン病とは:若年層に多い炎症性腸疾患の正しい理解と初期対応

クローン病は、若年層を中心に発症することが多い炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)のひとつであり、口から肛門まで消化管の全域にわたって炎症を起こす可能性がある慢性疾患です。特に小腸や大腸に病変が見られることが多く、診断や治療には高度な専門性が求められます。

当院では、腹痛や下痢、体重減少などの消化器症状に悩む方の初期診療の窓口として、必要に応じて検査を行い、クローン病の疑いがある場合には適切な時期に総合病院の専門医療機関に紹介しております。

クローン病の病態と炎症の特徴

クローン病では、消化管の一部または複数箇所に慢性の炎症が生じ、腸壁の全層(粘膜から漿膜まで)に炎症が及ぶことが特徴です。
このため、潰瘍(かいよう)や瘻孔(ろうこう:異常な通路)、狭窄(きょうさく:腸管が狭くなる状態)などの合併症を引き起こすことがあります。

炎症の原因は明確ではありませんが、遺伝的素因、免疫異常、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れなどが複雑に関係しているとされています。最近の研究では、腸内フローラの構成の変化が免疫反応を過剰に活性化させる要因となっていることが指摘されています【PubMed: PMID 30061066】【PubMed: PMID 30922196】。

クローン病の症状と生活への影響

クローン病の症状は、病変の部位や炎症の程度によってさまざまです。代表的な症状として、以下のようなものが挙げられます:

  • 慢性腹痛:狭窄や潰瘍による腹部の痛み
  • 持続的な下痢:水様便が数週間以上続くことも
  • 発熱:腸の炎症に伴う軽度から中等度の発熱
  • 体重減少:吸収障害による栄養不足
  • 肛門病変:痔瘻、裂肛、膿瘍など

これらの症状は再燃と寛解(症状が落ち着く時期)を繰り返すことが特徴で、患者さんの学業や仕事、日常生活に大きな支障をきたします。

クローン病の検査と初期診療の流れ

当院では、消化器内科専門医による詳細な問診と診察に加え、以下のような検査を実施することで、クローン病の可能性を評価します:

内視鏡検査

大腸カメラ(下部内視鏡)を行い、腸粘膜の潰瘍やびらん、縦走潰瘍といった典型的な所見を観察します。必要に応じて、小腸内視鏡(ダブルバルーン内視鏡)も考慮されます。

画像検査

当院では腹部超音波検査を迅速に行うことができ、腸壁の肥厚や腸周囲の炎症の有無を確認可能です。より精密な評価が必要な場合は、CTやMRI(特に腸管MRI:MRE)のある総合病院へ紹介します。

血液検査・便検査

CRPや白血球数の上昇、貧血の有無、便中カルプロテクチン(炎症の指標)などを調べ、炎症性腸疾患の可能性を把握します。

専門医療機関との連携:クローン病診断と治療の適切な導線

クローン病は、診断後の治療方針の決定や治療薬の選定に高い専門性が求められる疾患です。
そのため、当院ではクローン病の確定診断が必要な段階や、病状が疑われるケースにおいては、信頼できる消化器病専門の総合病院へ速やかに紹介を行っております。

当院の役割は、「最初の相談窓口」として、気になる症状がある患者様に対して速やかなスクリーニングを行い、必要な検査と病状評価を行ったうえで、適切なタイミングで専門医療にバトンタッチすることです。

クローン病の治療:寛解を目指した段階的アプローチ

治療の基本は、寛解導入(炎症を抑えて症状を軽くする)寛解維持(再発を防ぐ)の2つのステップに分かれます。総合病院では以下のような治療が行われます:

薬物療法

  • 5-ASA製剤:軽症例に使用される抗炎症薬
  • ステロイド薬:中等症以上の炎症に有効。短期使用が基本
  • 免疫調節薬(アザチオプリン等):再発予防に使用
  • 生物学的製剤(抗TNF-α抗体など):高度な炎症やステロイド依存例に対して使用

栄養療法

成長期の子どもや若年層には、経腸栄養療法(エレンタールなど)を併用することで、栄養状態の改善と炎症の鎮静を図るケースもあります。

手術療法

狭窄、穿孔、瘻孔などの合併症が生じた場合には、腸管の一部切除などの手術が検討されます。

クローン病と上手に向き合うために

クローン病は再発を繰り返す慢性疾患ですが、治療法の進歩により、寛解を長期間維持することが可能となってきています。現在では、生物学的製剤などの新しい治療選択肢も増え、早期の介入が予後に大きく影響することがわかっています。

だからこそ、「症状が軽いから」「まだ若いから」と我慢せず、早めに受診することが大切です。当院では、腹痛や下痢、体重減少などの消化器症状を感じる患者様に対して、しっかりと診察と初期評価を行い、必要に応じて地域の高度医療機関にスムーズに連携・紹介できる体制を整えています。

まとめ:クローン病を疑ったら、まずは身近な専門クリニックへ

クローン病は、専門性の高い診断と継続的な治療管理が必要な疾患です。しかし、発症初期には風邪や胃腸炎と見分けがつかないことも多く、症状を軽視しがちです。

当院では、地域に根差した消化器内科クリニックとして、「消化器症状に対する初期対応の窓口」という役割を大切にしながら、クローン病を含むさまざまな消化器疾患の早期発見に努めています。

気になる症状がある方、長引く腹痛や下痢に悩まれている方は、ぜひお早めにご相談ください。

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