ブログ

経鼻内視鏡(胃カメラ)のメリットとデメリット

local_offer内視鏡消化器疾患

経鼻内視鏡のメリットとデメリットを徹底解説

当院では胃カメラ検査(上部消化器内視鏡検査)で経鼻内視鏡(けいびないしきょう)を使用しています。
これは鼻から内視鏡を挿入する検査方法で、消化管の観察を行います。
従来の経口内視鏡に比べ、患者にとって快適であるとされる一方、注意点も存在します。
本記事では、経鼻内視鏡のメリットとデメリットをそれぞれ詳しく解説し、検査を選ぶ際の参考になる情報を提供します。


経鼻内視鏡のメリット

吐き気が軽減される

経鼻内視鏡の最大のメリットは、嘔吐反射がほとんど起こらない点です。
嘔吐反射とは、内視鏡が舌根や喉に触れることで生じる不快感を指します。
経鼻内視鏡では、内視鏡がこれらの部位に触れないため、検査中の不快感が大幅に軽減されます。
従来の経口内視鏡が苦手な患者にとって経鼻内視鏡を使用することで、苦痛少なく胃カメラ検査の実施ができます。。

会話が可能

検査中でも患者が話すことができる点も、経鼻内視鏡の大きな利点です。
不安や痛みを感じた際に医師にその場で伝えることができるため、安心感を持って検査を受けることができます。
また、医師とリアルタイムでコミュニケーションをとれることで、患者が検査の進行状況を把握できる点もメリットの一つです。

心理的ハードルが低い

経鼻内視鏡は細径の内視鏡を使用するため、挿入時の違和感が少なく、検査に対する心理的なハードルが低いです。
このため、検診や定期検査を受ける際の負担が軽減され、消化器疾患の早期発見に繋がります。

麻酔の使用が少ない

経口内視鏡では、嘔吐反射を抑えるために麻酔を使用する場合があります。
一方、経鼻内視鏡では局所麻酔のみで対応できることが多く、麻酔による副作用を心配な方にも適しています。


経鼻内視鏡のデメリット

鼻腔への負担

鼻腔から内視鏡を挿入するため、鼻の中に一時的な違和感や痛みを感じることがあります。
特に鼻腔が狭い患者や鼻中隔湾曲症のある患者では、検査が難しくなる場合があります。
また、慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎を持つ患者では、鼻腔内の炎症が挿入時の不快感を強めることがあります。
当院では前処置を工夫することで、アレルギー性鼻炎の方でも検査が可能で、挿入に伴う鼻腔の痛みの軽減にも努めています。

鼻出血のリスク

鼻腔内の粘膜が傷つくことで、鼻出血が発生する可能性があります。
このリスクは、特に鼻腔の血管が弱い方や抗凝固薬や抗血小板薬を服用している方で高くなります。
鼻出血が起こると心理的な不安を感じる患者も多く、検査後の適切なケアが求められます。
当院では検査後に鼻出血がある方は、鼻に止血効果のある薬剤をしみこませた綿球を挿入して対応します。

画質や操作性の制約

経鼻内視鏡は細径の構造を持つため、経口内視鏡に比べて画像解像度がやや劣る場合があります。
近年の機材では以前の様な画質の差は殆どありません。
当院で使用している機材も経口とほとんど差のない画質での検査ができます。
しかし経鼻内視鏡検査では拡大機能がないため、細かい病変を詳しく観察する必要があるケースでは、経鼻内視鏡が最適でない場合があります。
経口での拡大内視鏡は細かく病変を観察するために有用ですが、検査による嘔吐やゲップなどの反応が強い場合には画像のピントが合わず、むしろ観察が難しくなるケースが有ります。
その際は経鼻内視鏡で観察を行うか、全身麻酔下で反応を抑えた検査をするかなどの対応が必要です。
また、細径であることから、内視鏡の操作性にも制限があり、複雑な操作を必要とする検査や治療には不向きです。
通常のクリニックで行う胃カメラ検査では複雑な操作が必要な治療を行うことはないため、操作性に関して大きな問題になることはないでしょう。
瀑状胃といったような変形の強い胃の観察の場合において経鼻内視鏡で検査が難航する場合があります

内視鏡の細さに起因する道具の制限、送水の制限

経鼻内視鏡は、内視鏡の径が細いため、内視鏡の中を鉗子などといった検査治療器具を使用する場合に機器の太さに制限があります。
そのため、総合病院で実施されるような内視鏡治療の場合では、経口内視鏡の方が適していることがあります。

送水と呼ばれる胃内を洗浄する機能もやや劣るため、泡や粘液が多い場合には観察に手間取り、検査時間が延びることが有ります。
また胃や十二指腸で出血があった場合に、出血量によっては検査が困難となります。

通常のクリニックでの検査は問題なることはあまりありませんが、注意すべき点です。

医師や施設の対応力

経鼻内視鏡を適切に行うには、医師の技術や経験が必要です。
通常医師が胃カメラを修練していく際には経口胃カメラから実施をしていきます。
その後に経鼻内視鏡を実施する形になりますが、通常の総合病院では経鼻内視鏡を実施していないケースもあり、医師によっては経鼻内視鏡の経験が少ない場合があります。

また、医療機関のよって前処置の方法が異なる場合はありますので対応に差がある場合もあります。
そのため、検査を受ける際には、医師のスキルや施設の設備を事前に確認することが重要です。


経鼻内視鏡を選ぶ際のポイント

経鼻内視鏡は、患者にとって快適な検査方法であり、嘔吐反射の軽減や自然な呼吸ができる点で大きなメリットがあります。
しかし、鼻腔の状態や必要とされる検査の精密さによっては、経口内視鏡が適している場合もあります。
以下の点に注意しながら、自分に合った検査方法を選びましょう。

  1. 鼻腔の形状や疾患がある場合は、事前に医師に相談する。
  2. 精密な観察や治療が必要な場合は、経口内視鏡を検討する。
  3. 出血リスクが高い場合は、経鼻内視鏡の実施について医師と十分に相談する。

定期的な検診による消化器疾患の早期発見は、健康を守るために欠かせません。
検査を受ける際には、信頼できる医療機関で医師と相談してください。
経鼻内視鏡の利便性と経口内視鏡の違いを理解し、最適な選択をしましょう。

クリニックでの胃カメラ検査においては地域医療を支えるという特性上、定期的な検査をしていただく事が重要と考えています。
辛い検査を繰り返し受けたくないと通常は思いますので、苦痛の少ない胃カメラ検査を大事にしており、経鼻内視鏡での検査を実施しております。
大きな処置や治療が必要な場合には適切な総合病院などの施設に紹介をさせていただいております。


参考文献

  1. Yagi, J., & Adachi, K. (2021). "Transnasal Endoscopy: Advantages and Challenges." Journal of Clinical Gastroenterology, 55(3), 202–208. DOI:10.1097/MCG.0000000000001443
  2. Gotoda, T., & Nakai, Y. (2019). "Improved Patient Comfort with Transnasal Endoscopy: A Review of Recent Advances." World Journal of Gastrointestinal Endoscopy, 11(5), 320–328. DOI:10.4253/wjge.v11.i5.320

関連記事

内視鏡の麻酔に使用される薬剤について

肝臓を守るための実践方法

代謝異常関連脂肪肝(Metabolic dysfunction associated fatty liver disease:MAFLD)について

NHKで紹介されたフィブロスキャンを当院では実施可能です

内視鏡検査の麻酔でプロポフォール使用はしておりません。

keyboard_arrow_up