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お腹の張り感(腹部膨満)とは、お腹が張ったり、重苦しく感じたり、膨らんで苦しい状態です。胃の不快感、痛みや吐き気、便秘、下痢を伴うこともあります。腹部膨満は、便の異常や腸の蠕動運動の低下が原因で生じることが多く、場合によっては大腸がんや腸閉塞などの重大な病気が原因で発症することがあります。
常にお腹が張ってる場合もあれば、朝だけ、食後だけ急に、女性の場合は整理前後で・・など時間や時期による変化もあります。
お腹の張り感(腹部膨満感)の原因
腹部膨満の原因はさまざまです。よくある原因には以下のようなものがあります。
- ガス
食事や飲み物、唾液を飲み込むときに空気を飲み込み、腸内にガスがたまることで腹部膨満が起こります。またガスを発生させる食べ物もあり、個人差はありますが、乳製品、小麦、豆類、キャベツ、ブロッコリー、キノコ、玉ねぎ、リンゴ、梨などがあります。
- 食物アレルギーや不耐症
特定の食べ物にアレルギーや不耐症があると、食べ物を消化しようとしたときに腸にガスや炎症が起こり、腹部膨満が発症することがあります。食物アレルギーや不耐症の原因となる食べ物には、牛乳、卵、小麦、大豆、魚介類などがあります。
- 腸の運動異常
腸の運動が低下するなど正常な蠕動に行われないと、食べ物が腸内をスムーズに通過できず、ガスや便が溜まり、腹部膨満が起こることがあります。腸の運動異常を引き起こす病気には、過敏性腸症候群や機能性便秘症などがあります。この場合はガスが溜まっていなくても、ガスがたまったような張る感覚になってしまいます。
- ストレス
ストレスは腸の運動や消化を悪くし、腹部膨満を引き起こすことがあります。
ストレスは空気を飲み込んでしまう呑気症などを起こすこともあり、更にお腹が張りやすくなります。
- 薬剤
一部の薬剤は、腹部膨満を引き起こす副作用があります。腹部膨満を引き起こす可能性のある薬剤には、利尿薬、抗コリン剤、抗うつ薬などで貼る感じががあります。
- おなかの病気
進行大腸がんや腸の癒着、腸閉塞などの病気も、腹部膨満の原因となることがあります。大腸の病気のみならず、婦人科疾患など他の臓器疾患でも腹部膨満を感じることがあります。
また病気ではありませんが妊娠中や生理中に悪化する事もあります。
色々なことが原因で腹部膨満は発生します。
特に器質的疾患のない腹部膨満の機能的腹部膨満として扱う事もあります。
機能性腹部膨満とは?
機能性腹部膨満とは、医学的な原因が明らかでないのに、腹部膨満やその他の消化器症状が続く状態です。機能性腹部膨満の原因は、腸の運動異常や自律神経の機能異常、ストレスなどと考えられています。
機能性腹部膨満の治療には、薬物療法や食事療法、生活習慣の改善などがあります。薬物療法では、ガスの発生を抑える薬や、腸の運動を改善する薬が用いられます。食事療法では、ガスを発生させる食べ物を避け、食物繊維を多く含む食べ物を食べるようにします。生活習慣の改善では、早食いを控え、規則正しい生活を送り、ストレスをためないようにしましょう。
お腹の張り感(腹部膨満感)の検査について
腹部膨満がある場合は、医師の診察を受ける必要があります。医師は問診や身体検査を行い、腹部膨満の原因を調べます。必要に応じて、大腸カメラや腹部エコー検査、CT検査などを行うこともあります。
大腸カメラ
大腸カメラは腹部膨満感を調べるうえでもっともポピュラーな検査です。
下剤で大腸の中を空っぽにした後に、お尻から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接見る方法です
早期大腸癌や過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎などの大腸の病気を調べる時に実施されます。
当院では全身麻酔を使用した苦痛の少ない大腸カメラ、最新の設備を使用しての精密な検査を内視鏡専門医が実施しています。
下剤を飲むためのトイレ付個室のご用意もあり、ストレスのない大腸カメラを実施しています。
胃カメラ
腹部の張り感では大腸カメラ以外にも胃カメラを実施するケースもあります。
胃の張りと腸の張りの区別は診察でも中々区別がつきにくく、どちらかにのみ問題があるケースというのは少ない印象です。
胸やけや胃酸過多・胃の痛み・吐き気などの胃の症状も併発している方も多くいらっしゃいます。
つまり腸のみの異常ではなく、胃腸の異常と考えられます。
ピロリ菌などが感染している場合には、除菌を行うことで症状が変化する可能性があります。
腹部エコー検査
腹部エコー検査は、絶食できていればその場ですぐできる非常に簡便な検査です。
大腸そのものの詳細観察には大腸カメラに軍配はあがりますが、その場ですぐできるという点で非常に有用な検査です。
肝臓・胆のう・膵臓・腎臓を観察できます。
また腸閉塞などの顕著な所見や便秘などは超音波でも観察できます。
婦人科臓器も確認できることがりますが、婦人科での経腟エコーの方が診断能は勝ります。
腹部レントゲン
腸管のガスを可視化するのには腹部レントゲンが一番わかりやすい検査になります。
腹部レントゲンでは絶食の必要もなく、その場で検査ができます。
腸閉塞、便秘や小腸のガス、胃のガスなどもみることができます。
当院でも実施可能な検査になります。
腹部CT検査
腹部を網羅的に見ることができる検査です。
放射線を使用すること、クリニックではなかなか実施できる検査ではないこと、大腸を詳細に見るには向いていない事などが、短所があります。
当院では近隣のCT撮影実施医療機関で検査を実施します。
お腹の張り感(腹部膨満感)の治療
腹部膨満はっても治療が難しい症状で、完全に治すことができない事もあり、非常に治療のしにくい症状です。
さらに腹部膨満の原因が様々なので、治療・対処法は原因によって異なります。
食べ物の発生するガスや食物アレルギーが原因の場合は、食事の注意を行います。
腸の運動異常が原因の場合は、生活習慣の改善や薬物療法を、ストレスが原因の場合は、薬物療法やストレスを解消する方法を見つけることも大切です。
漢方を使用した治療を行う事もあります。
サプリメントや整腸剤などで腸内環境を整えることで変化が有る場合もあります。
女性の方に多いのですが、腸が下垂している場合は運動をおすすめします
またおなかの病気が見つかった場合は、病気にあった治療を行います。
大腸癌であれば手術などの治療を、過敏性腸症候群であれば薬物療法など各疾患に対応する治療を行っていきます。
ガスがたまる、お腹が張る、腹部膨満感という状態は完治がなかなか難しいことが多く、様々は対処法をみつけて地道に対策していくことが大事です。
薬のみで・・というのではなく様々な対処法を駆使していく必要がある状態です。
低FODMAP(フォドマップ)とは?
低FODMAPとは、近年注目されているガスに対する対処法としての食事療法です。
FODMAPとは、発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、および糖アルコールのことで、一部の人に食材が影響してガスや腹痛、膨満感などの消化器症状を引き起こす原因になります。
FODMAPには、果物、野菜、穀物、乳製品など、さまざまな種類の食品に含まれています。FODMAPが多い食品を避ける食事療法(低FODMAP)が、ガス、腹部膨満、お腹の張りの改善に効果的です。
FODMAP制限食とは、FODMAPが多い食品を避ける食事療法です。FODMAP制限食が有効なケースでは、ガスや腹痛、膨満感、お腹の張りなどの消化器症状が改善することがあります。
該当する食材は多数ありますが、すべてを制限しないといけないわけではありません。
その中で食べることができる食事を探していくことが非常に大事です。
ただFODMAPが万能なわけではありません。
食材以外にも様々な原因がある場合は、食事以外の対処法も大事です。
FODMAP制限食は、医師や専門の管理栄養士の指導のもとで行うことが大切です。FODMAP制限食を行うことで、必要な栄養素が不足したり、他の健康上の問題を引き起こしたりすることがあるためです。
腹部膨満の治療法は、人によって異なります。腹部膨満に悩んでいる場合は、消化器専門医に受診をし、医師に相談して自分に合った治療法を見つけることが重要です。
著者
資格
日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会