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代謝異常関連脂肪肝(Metabolic dysfunction associated fatty liver disease:MAFLD)とは
代謝性機能障害に伴う脂肪肝のことで、2020年に新しく提唱されました。
脂肪肝に「肥満」、「2 型糖尿病」、もしくは「2 種類以上の代謝異常」のいずれか合併している場合に代謝異常関連脂肪肝(Metabolic dysfunction associated fatty liver disease:MAFLD、マッフルディ)と診断されます。
一般診療においても肝酵素異常のある高血圧・高脂血症・糖尿病などの方は良くいらっしゃいます。
一般内科で治療が行われていることも多く、適切な治療をされてている場合は問題ありませんが、肝臓に関しては検査がされていないケースも多いため、一度肝臓内科を受診することをお勧めします。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の診断
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)は脂肪肝に「肥満」または「2型糖尿病」または「2種類以上の代謝異常」が合わさった状態です。
脂肪肝の診断は、採血検査・腹部エコー検査などの画像検査、肝生検などでまず診断されます。肝生検は必須ではないので、通常であれば採血と腹部エコー検査で診断されることが多いでしょう。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の診断
脂肪肝の状態に下記のいずれかがが合併していれば代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)となります。
①肥満:アジア人ではBMI23以上
②2型糖尿病:糖尿病の診断基準に従って診断
➂2種類上の代謝異常:
腹囲≧90/80cm(アジア人男性/女性)
血圧≧130/85mmHgまたは高血圧治療中
脂質異常症また脂質異常の治療中
耐糖能異常、インスリン抵抗性高値など糖尿病予備軍
など
上記に該当する場合は代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)と診断されます。
このような方は健診などでも比較的よく見るような印象です。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の違い
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)は近年注目されている非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD/NASH)とはどのように違うのでしょう?
答えは代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)にはアルコールの量は診断に関係ありません。
表にすると下のようになります。
MAFLD | MAFLDかつNAFLD | NAFLD | |
代謝異常 | あり | あり | なし |
規定以上のアルコール摂取 | あり | なし | なし |
つまりMAFLDとNAFLDは別の概念になるので、両方が併存している状態も考えられます。
なぜMAFLDという概念が出来たのか?
様々な研究の結果、下記の様な事がわかっています。
MAFLDの診断基準で診断を行うと、肝臓の繊維化をしている集団を特定しやすい。
つまりNAFLDよりもMAFLDの方が肝臓の繊維化が強い可能性があり、繊維化が進行しやすい脂肪肝(肝臓の炎症をともなう)を探す場合にはMAFLDを探す方が近道と考えられています。
NASHの様な繊維化が進行するNAFLDもありますが、その際はやはりMAFLDの合併がある様に感じます。
特に糖尿病を合併しているMAFLDは繊維化の進行が速いと言われています。
肝細胞癌の主要原因の大きな部分を占める
現在医学においてB型肝炎、C型肝炎の治療は飛躍的に進歩したため、肝炎ウイルスによる肝細胞癌は減少しており、その一方で脂肪肝関連の肝細胞癌が増えています。
海外の報告にはなりますが全肝細胞癌のうち約70%がMAFLD関連ではと言われています。
肝臓以外にも影響がある
①動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)
代謝異常のある脂肪肝(MAFLD)の患者ではアルコールの飲酒歴のない脂肪肝(NAFLD)に比べて、優位に動脈硬化に伴う心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)が多いことが分かっています。
②肝臓外悪性腫瘍(がん)
肝臓外の癌がMAFLDの方で増加すると言われています。
大腸癌ではMAFLDの方では頻度が増加すると言われています。また大腸がんの原因である大腸腺腫も同様にMAFLDの方で増加し、性別や年齢よりも強い影響があるとされます。
そのほかにも食道がん、胆のうがん、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、子宮体癌、甲状腺癌、乳癌なども増えるとの報告があります。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の検査
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の代表的な検査には下記の者があります。
採血検査
採血検査で肝酵素のチェックと代謝異常のチェックを行います。
糖尿病、脂質異常などの項目を調べます。
肝臓のチェックでは肝臓の繊維化マーカーなどのチェックも重要です。
腹部エコー検査
腹部エコー検査で脂肪肝をまずチェックします。
エコー検査がもっとも簡便に脂肪肝をチェックできる検査です。
エコーの見た目でも繊維化の進行がわかるときがあります。
腹部エコー検査では肝臓がんのチェックも実施できます。
フィブロスキャン検査
フィブロスキャンでは肝臓の繊維化の程度、肝臓の脂肪量などが短時間で数値化されます。MAFLDでは肝生検での診断は必須ではないので、フィブロスキャンは肝生検に変わる検査として注目を浴びています。
検査自体は簡便ですが、限られた医療機関でしか実施ができないため注意が必要です。
フィブロスキャンは繰り返し実施できるので、脂肪肝の経過をみていくうえでも非常に有用な検査です。
さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック和光市駅前院では埼玉県でも珍しいフィブロスキャンを実施可能な医療機関です。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の治療
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の治療はNAFLD/NASHと同様に特有の治療法がありません。
そのため通常の脂肪肝の治療に加えて代謝異常の治療を行います。
脂肪肝の治療について
脂肪肝は生活習慣病の一種ですので、生活習慣の改善が必要です。
一般的には飲酒の制限、運動を取り入れる、食事の制限などを行い、体重や体脂肪率を下げるようにします。
MAFLDなどの繊維化の進行が懸念される方のなかに、生活習慣改善のみでは対処が不可能な方がいらっしゃいます。そのような方は薬物療法を併用しますが、脂肪肝特有の薬は存在しないため、全体の状況をみて糖尿病の薬や脂質異常の薬などを使用します。
このような治療には知識や経験が必要ですので、肝臓内科での加療をお勧めします。
代謝異常の治療について
該当する代謝異常に対応する治療を行います。
高血圧なら降圧剤を、脂質異常であれは脂質を下げる薬を、糖尿病であれば血糖を下げる薬を状況や程度に応じて使用します。
内服以外にも生活習慣改善・食事制限なども重要ですので、管理栄養士が在籍して栄養指導が実施できる医療機関への受診が良いでしょう。
代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)の検査治療は当院へ
さいたま胃腸内視鏡と肝臓のクリニック和光市駅前院ではMAFLDの検査治療を行うための環境が整っています。
①腹部エコー検査、フィブロスキャン、肝臓の採血検査各種を実施することで肝臓の状態をチェックできます。肝臓専門医が在籍しいているため、肝臓に関する適切な診療が可能です。
②内科診療を長年実施してる医師が複数名在籍していますので、代謝異常に対する治療も併せて実施できます。
➂管理栄養士が複数名在籍していますので、栄養指導の実施も可能です。
④がんのチェックのための胃カメラ大腸カメラなどの内視鏡検査も実施可能です。
MAFLDの治療は継続的な治療が必要です。
肝臓内科+生活習慣病内科+栄養指導+各種全身検査がそろっている当院にご相談ください。
著者
資格および所属
日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会
経歴
平成15年 | 東京慈恵会医科大学 卒業 |
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平成15年 | 東京警察病院 |
平成23年 | JCHO東京新宿メディカルセンター |
平成29年 | 株式会社サイキンソーCMEO |
平成30年 | 東長崎駅前内科クリニック開院 |
当院は和光市・朝霞市・志木市を中心に埼玉全域の方に、生活習慣病(高脂血症、糖尿病、高血圧)、消化器内科診察(胃腸科)、肝臓内科診察(脂肪肝)、内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を提供します。
有楽町線・東武東上線・副都心線の和光市駅南口駅徒歩1分の立地になります。
池袋などの豊島区や練馬区・板橋区からもアクセスがよい立地になりますので、広い範囲の方に当院の医療を提供いたします。