胃カメラは鎮静剤・全身麻酔を使うと楽?メリット・デメリットや注意点を紹介

胃カメラは、痛みや苦痛が強いイメージがあり敬遠されがちですが、鎮静剤を使用すると心身への負担を軽減しながら検査を受けられることをご存じですか? 鎮静剤には検査に対する不安や恐怖心、つらさを軽減する効果が期待できるため、初めて胃カメラを受ける方や以前胃カメラでつらい思いをした方でも、安心して検査が受けられます。
とはいえ、鎮静剤にはどのようなメリットとデメリットがあるのか、気になる方も多いかもしれません。
この記事では、胃カメラの検査方法と鎮静剤の種類、鎮静剤を使うメリットデメリットなどについて詳しく紹介します。
痛みに弱い方や、胃カメラを受けたいけれど不安や恐怖が強く先延ばしにしている方は、ぜひ最後までご覧ください。

受けやすくなった胃カメラ

以前は痛みや苦痛を感じやすく苦手な方も多かった胃カメラですが、現在では従来の口から内視鏡を挿入する方法だけでなく、鎮静剤・全身麻酔を使用したり鼻から挿入したりなど、より快適に検査を受けられるようになっています。
ここでは、胃カメラの検査方法の種類について詳しく紹介します。 

鎮静剤・全身麻酔を使った経口内視鏡

経口内視鏡検査とは、口から内視鏡スコープを挿入する胃カメラ検査の方法です。
直径9〜12mm程度の管を口から挿入するため、内視鏡スコープがのどを通過する際に「オエッ」となる嘔吐反射が起こりやすく、苦手とする方も多いといわれています。
しかし近年では、鎮静剤を使うことで嘔吐反射を抑え、より快適に検査を受けることができるようになっています。
鎮静剤を使うというと、副作用の心配をされる方も多いですが、患者さんの嘔吐反射の度合いや体つき、年齢などを医師が確認しながら少量ずつ鎮静剤を追加していくため、副作用の心配もほとんどなく安全に検査が行えます。

経鼻内視鏡や細い内視鏡

経鼻内視鏡とは、鼻から内視鏡スコープを挿入する胃カメラ検査の方法です。
経鼻内視鏡では、ほとんどの場合鎮静剤を使用せずに検査が行われますが、患者さんの希望によっては鎮静剤・全身麻酔が使用できるケースもあります。
一般的な内視鏡スコープと比べて半分程度(約5〜6mm)の太さの内視鏡を使用することで、嘔吐反射が起こる原因となる舌の付け根に触れずに検査ができるため、検査時の患者さんの負担が少なく、全身麻酔無しの場合は医師と会話ができるほど楽に検査が受けられる方もいます。
ただし、鼻腔の大きさによっては鼻から挿入できなかったり、痛みが生じたりする可能性もあるため、不安な場合は事前に医師に相談しておくとよいでしょう。
なお、経口内視鏡でも細い内視鏡スコープを使用できる場合もあります。
鼻腔が狭い方や従来の経口内視鏡でつらい思いをした方も、苦痛を軽減しながら検査が行えます。

鎮静剤のほかに局所麻酔も使用

一般的に、鎮静剤・全身麻酔の使用・不使用にかかわらず、のどや鼻に表面麻酔を施してから胃カメラ検査を行う医療機関が多いです。
胃カメラで使用する麻酔とは、のどや鼻を内視鏡スコープが通過する際の痛みや不快感を和らげるために使用する『表面麻酔・局所麻酔』のことを指します。
一方、鎮静剤とは胃カメラの検査中に患者さんが感じる緊張や不安を和らげ、リラックスして検査が受けられるようにするために使用するものです。
検査直前にのどや鼻に表面麻酔をすることで、内視鏡スコープがのどや鼻を通過する際に生じる不快感や痛みを軽減しながら検査が行えます。

胃カメラで用いられる鎮静剤・全身麻酔の種類

胃カメラで用いられる鎮静剤・全身麻酔にはさまざまな種類があり、医療機関によって使用する薬剤が異なります。
薬剤によって効果の強さや持続時間などが違ってくるため、不安な方は事前に医師と相談するようにしましょう。
ここでは、胃カメラで用いられる全身麻酔薬の例を2つ紹介します。

ミダゾラム(ドルミカム)

胃カメラで用いられる鎮静剤の中でも、一般的に使用されているのが『ミダゾラム』です。
鎮静作用と睡眠作用、抗不安作用を兼ね備えていて、安全性も高いといわれています。
また、血管痛がないだけでなく、検査中の追加投与も迅速に行えて作用時間も短く、検査後に効果が切れるまでの時間も短くて済むのもミダゾラムの特徴です。
ただし、効果の出にくい方、反対に効きすぎてしまう方など、人によって効果の出方が異なります。
薬が効きすぎてしまうことを心配される方も多いですが、ミダゾラムにはフルマゼニルという拮抗薬(薬の作用を弱めたり打ち消したりする作用を持つ薬)があるため、安心して検査を受けられます。

プロポフォール

プロポフォールは、ドルミカムと比べて鎮静作用にブレがないことから、ドルミカムが効きにくい方や深い鎮静作用を求める方に用いられることが多い薬剤です。
保険適用外の薬剤ですが、患者さんが楽に検査を受ける可能性を高めるために、保険適用の胃カメラにおいても医師の判断で使用されることがあります。原則的に麻酔担当の医師を置くことが必要とされています。
プロポフォールは効果の持続時間も短いため、検査終了後すぐに目覚めることができます。
また、呼吸や循環抑制からの回復もスムーズで、安全性が高いのもプロポフォールのメリットです。
ただし、注射するときに血管痛が生じる可能性があったり、拮抗薬がなかったりするデメリットもあるため、不安な方は医師と相談のうえ使用することをおすすめします。

胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使うメリット

胃カメラで鎮静剤を使うと、以下のようなメリットがあります。
苦痛や不安の軽減 医師がじっくり観察できる 次回検査への抵抗が低下する ここでは、これらのメリットについて詳しく紹介していきます。

苦痛や不安の軽減

経口内視鏡では、内視鏡スコープがのどを通る際に舌の付け根あたりを刺激してしまうため、嘔吐反射が起こります。
特に初めて胃カメラを受ける方や、過去に胃カメラで苦痛を感じた経験のある方は、検査に対する不安感が強くなってしまいがちですが、鎮静剤を使用して苦痛や不安を軽減しましょう。
また、嘔吐反射が強い方の場合も「オエッ」となることで内視鏡スコープがスムーズにのどから先へ挿入できず、苦痛を感じる時間が長引いてしまうこともあります。
鎮静剤・全身麻酔を使用すれば、ほとんど眠ったような状態で検査が行えるため、苦痛や不安を感じたくない方には、メリットが大きいといえます。

医師がじっくり観察できる

胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使うことは、患者さんの苦痛や不安を軽減するだけでなく、医師にとってもメリットがあります。
鎮静剤なしの胃カメラは苦痛を伴うことが多く、嘔吐反射が起こるだけではなく、なかには暴れてしまう方もいます。
胃カメラでは胃の中に空気を送り込んで内部を広げ、細かい部分までチェックする必要がありますが、患者さんが暴れてしまってはきちんと胃の中を観察できなくなってしまう可能性もあるでしょう。
鎮静剤を使用すれば、患者さんが落ち着いた状態をキープできるため、患者さんの状態に左右されることなくじっくりと胃の中を観察でき、それによってわずかな病変の見落としを防げます。

次回検査への抵抗が低下する

胃カメラは、胃がんの早期発見につながることから、定期的に受けるべきです。一般的に1〜2年の間隔で受けるのがよいとされています。
しかし一度胃カメラでつらい経験をした方の中には、『二度と受けたくない』と思っている方もいるのではないでしょうか。
鎮静剤を使用すると、胃カメラの検査時の苦痛を抑えられるため、胃カメラに対する抵抗が低下して「次回もまた検査を受けよう」という気持ちになり、結果的に胃がんなどの病気の早期発見につながります。

胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使うデメリット

鎮静剤を使用した胃カメラにはさまざまなメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットもあることを理解しておく必要があります。
意識や血圧の低下・呼吸抑制などが起こる可能性 一過性の逆行性健忘 検査後1時間の安静 帰宅時に運転ができない ここでは、胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使うデメリットについて詳しく紹介します。

意識や血圧の低下・呼吸抑制などが起こる可能性

鎮静剤の副作用として具体的な例は、薬が効きすぎることによる意識や血圧の低下、呼吸抑制などですが、副作用が出る方と出ない方がいます。
医師も細心の注意を払いながら鎮静剤を使用しますが、副作用の程度は人によって異なるため、不安な場合は事前に医師とよく相談するようにしましょう。

一過性の逆行性健忘

胃カメラで鎮静剤を使用すると、『一過性の逆行性健忘』が起こる可能性があります。
一過性の逆行性健忘とは、一時的に検査前後の記憶があいまいになったり、思い出せなくなったりする症状のことです。
検査中に痛みを感じた場合でも、検査後には痛みがあったことを忘れている可能性もあります。
また、鎮静剤を使用すると検査中は眠ったような状態となるため、自分の胃の中の状態を検査中にモニターで見ることや、医師の説明を聞くことができない可能性があります。
検査後の説明を受けても忘れてしまうケースもあります。

検査後1時間の安静

胃カメラで鎮静剤を使用した場合、検査後は薬の効果が切れるまで1時間ほど安静にする必要があります。
検査を終えてすぐに帰宅できないため、鎮静剤・全身麻酔を使用しない場合と比べて少し時間がかかる点に注意しましょう。
仕事や家事、子育てなどで忙しい方も多いかもしれませんが、胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使用する場合は、時間に余裕をもって検査を受けるようにしてください。

帰宅時に運転ができない

胃カメラで鎮静剤・全身麻酔を使用した当日は、車やバイク、自転車の運転はできません。
薬が切れるまで安静にしていたとしても、体内には薬が残っている可能性があるため、禁止されています。
普段、車やバイクで移動することが多い方は、タクシーを利用するなど、他の移動方法を検討しましょう。
また、鎮静剤の使用後は、危険を伴う機械の操作も控える必要があります。
仕事中に眠気を感じたり集中力や注意力が低下したりする可能性があるため、できれば検査後は仕事をしない方が安全です。

胃カメラ検査で鎮静剤が効きやすい人・効きにくい人

胃カメラ検査における患者さんの負担を軽減するために使用される鎮静剤ですが、人によって効きやすい場合と効きにくい場合があります。
一般的に、鎮静剤が効きにくい方は100人に1人程度だといわれていて、その原因は主に以下の3つだとされています。

  • 日常的にお酒を飲んでいる
  • お酒に強い 抗不安薬やうつ病の薬を常用している
  • 痛み止めをいつも飲んでいる

鎮静剤が効きにくい原因は、体質ではありません。
万が一効きにくかったとしても、鎮静剤の量を増やすことで、眠ったような状態で検査を受けることが可能になります。
反対に、お酒が弱い方や高齢の方、呼吸器や肝臓などの身体の機能が弱っている方は、鎮静剤が効きやすいといえます。
むしろ薬が効きすぎてしまい、酸素濃度や血圧が低下してしまう恐れもあるため、不安な場合は事前に医師とよく相談してから鎮静剤を使用しましょう。

胃カメラ検査で鎮静剤を使えない人

使用する薬剤にもよりますが、以下のような方は鎮静剤を使用できない可能性があります。

  • 妊娠中の方
  • 重症筋無力症の方
  • 急性閉塞隅角緑内障の方
  • HIVプロテアーゼ阻害剤を使用している方

妊娠中の方は、使用する薬剤や検査によって胎児に悪影響を与えてしまう恐れがあるため、鎮静剤の使用はできません。
授乳中の方は、鎮静剤の使用から一定時間は授乳できませんが、検査自体は問題なく受けられます。
また、重症筋無力症の方や急性閉塞隅角緑内障の方、HIVプロテアーゼ阻害薬を使用している方も、鎮静剤・全身麻酔が使えない可能性があります。
そのような場合は、鼻から内視鏡スコープを挿入する経鼻内視鏡や、細い内視鏡を使用した経口内視鏡で検査を行うことが可能です。

まとめ

胃カメラは胃がんなどの胃の中の異常を発見するために、定期的に受けておくべき検査です。
これまで不安や恐怖でなかなか検査を受ける勇気が出なかった方でも、鎮静剤を使用すると痛みや苦痛を軽減しながら検査が受けられるだけでなく、胃の中を隅々まで調べられます。
現在では多くの医療機関で鎮静剤が使用できますが、対応していないところもあるため、事前に鎮静剤・全身麻酔を使用できるかどうか確認してから検査を受けるようにしましょう。
当院では、日本消化器病内視鏡学会・内視鏡専門医、日本消化器病学会消化器病専門医の資格を有する医師が、患者様一人ひとりに最適な胃カメラ検査を行っています。
患者様の苦痛を最小限に抑えるために、注射による鎮静・全身麻酔にも対応していますので、胃カメラが苦手な方や初めて受ける方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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