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肝臓の繊維化マーカーについて
肝臓の線維化とは、肝臓の慢性的な損傷や炎症が継続するとで起こる瘢痕化(きず)をさします。
この繊維化が進むと徐々に肝臓が硬くなり肝機能が低下していきます。
肝硬変や肝不全の場合は繊維化は高度になります。
繊維化は肝臓の炎症の傷跡とお考え下さい。
肝臓の繊維化を確実に見るためには肝生検というものを実施する必要があります。
肝生検は体の表面から肝臓に針を刺し、肝臓の細胞を直接採取する検査で、顕微鏡を使用して細胞の繊維化を確認します。
ただ肝生検は入院を必要とする侵襲的な検査で、簡便に行えるものではありません。
また採取した細胞がたまたま状態が良い細胞であると、肝臓全体を反映してない可能性あります。
そのため肝生検をする方は選んで提案をしております。
一方で採血で実施をできる繊維化マーカーというものがあります。
ヒアルロン酸、IV型コラーゲン、IV型コラーゲン7S、III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)、M2BPGiがあります。
いずれも採血を実施できるので外来で簡便に実施ができる検査です。
また採血のみなので繰り返しの実施か可能で、病状の経過観察などにも使用できます。
そのためまずは採血で繊維化マーカーを実施して、必要に応じて肝生検を勧めるという流れになります。
患者さんによっては繊維化マーカーの実施のみで経過をみていくこともあります。
肝臓の繊維化マーカーの種類
ヒアルロン酸、IV型コラーゲン、IV型コラーゲン7S、III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)、M2BPGiが代表的なものです。
ヒアルロン酸
ヒアルロン酸は体内の組織中(関節など)に幅広く存在している物質です。
肝臓で炎症や繊維化が進むと、肝臓の中での産生が強くなるために、採血でヒアルロン酸数値が上昇します。
肝臓のみならず、
産生遊離されたヒアルロン酸は血流にのってリンパ組織へ移行し,さらに肝臓へ移り代謝される。一方,肝臓の線維化が進むと肝臓内の伊東細胞,線維芽細胞などのヒアルロン酸産生が亢進する。また,血中のヒアルロン酸の約90%以上を分解するとされている肝類洞内皮細胞は線維化に伴いその機能を失い,ヒアルロン酸の血中の濃度が増加する。
臨床的には,肝硬変と非肝硬変の鑑別に有用性が高く,C型慢性活動性肝炎におけるIFN治療効果予測にも有用である。また炎症を伴う疾患(例えば関節リウマチなど)では炎症の修復過程において線維芽細胞が活性化され,障害部位が修復される。この時ヒアルロン酸の産生も亢進し,血中に遊離する量も増加する。
IV型コラーゲン
は、肝臓の血管と胆管を構成するタンパク質です。肝臓が損傷すると、肝臓はIV型コラーゲンを産生して損傷した領域を修復します。IV型コラーゲンの血中濃度が高いことは、肝臓の線維化の指標です。
IV型コラーゲン7Sは、肝臓の血管と胆管に存在するIV型コラーゲンの亜種です。IV型コラーゲン7Sの血中濃度が高いことは、肝臓の線維化の指標です。
III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)
III型プロコラーゲンN末端ペプチド(P-III-P)は、体内の結合組織に広く存在するコラーゲンが作られる際に、同時に作られる物質で、肝線維化の程度を示すマーカーとして使用されます。
コラーゲンの生成が強くなるような状態で、数値が上がります。肝疾患以外では腎臓の病気などで上がることがあります。
M2BPGi
血液中のヒアルロン酸、IV型コラーゲン、P-III-Pの量は肝臓だけでなく、他の身体の要素からも影響を受ける可能性があるため、精度に一部限界があります。
そこで注目されているのが、M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)という新たなマーカーです。これは肝線維化の進行に伴う蛋白の変化をしらべるもので、肝線維化の高い精度で評価することが可能です。これまでの血液検査と異なり、M2BPGiは肝臓に特異的な変化を評価することができるため、その評価精度は非常に高いとされています。
また線維化の進行だけでなく、将来の肝細胞癌の発生も予測することができると報告されています。
肝臓における肝線維化マーカーの参考基準値 ・肝胆膵 70巻増刊号、2015 ・久野 敦;医学のあゆみ、249(8)、2014 | ||||||||||||||||||||||||||||
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採血以外で肝臓繊維化を評価する方法
エラストグラフィー
採血以外で肝臓の繊維化を評価する方法としてエラストグラフィーがあります。
超音波を使用する超音波エラストグラフィーとMRIを使用するMRエラストグラフィーがあります。
フィブロスキャン検査
当院では、簡便で且つ高精度な肝繊維化検査としてフィブロスキャン検査を実施しております。
和光市・志木市・朝霞市のみならず埼玉県でもこの検査ができる施設は限られております。
当院では各種採血も含め、腹部超音波検査・フィブロスキャン検査なども実施ができる環境を整えています。
著者
資格
日本内科学会認定 認定内科医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 内視鏡専門医
日本肝臓学会認定 肝臓専門医
日本消化管学会認定 胃腸科指導医
日本糖尿病学会
経歴
平成15年 | 東京慈恵会医科大学 卒業 |
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平成15年 | 東京警察病院 |
平成23年 | JCHO東京新宿メディカルセンター |
平成29年 | 株式会社サイキンソーCMEO |
平成30年 | 東長崎駅前内科クリニック開院 |